04 EXAM

全国通訳案内士試験「一般常識」について

photo by Ekaterina Z. on unsplash

2022年度全国通訳案内士試験の概要が4月28日に官報に公示されました。

  • 官報公示 4月28日
  • 筆記試験 令和4年8月21日(日)
  • 口述試験 令和4年12月11日(日)
  • 願書受付 令和4年6月1日(水)〜7月11日(月) *電子申請ただし免除申請書類の一部のみ郵送受付
  • 受験手数料 11,700円(二カ国語受験は23,400円) *クレジットカード決済またはコンビニ払込

筆記試験の「一般常識」について

私は2021年度の試験を受けました。試験科目のうち、自分にとってもっとも大変だったのは日本地理でしたが、一般常識は「何をどのくらい勉強すればよいのかわからない」という心配がありました。まずは「ガイドライン」をじっくり読みました。「(例えば、〜)」と示されているように前年度に発行された国土交通省が発行している「観光白書」が重要であることがわかりました。

今年度の全国通訳案内士試験ガイドラインは昨年度のものと同じです。

「一般常識」(産業、経済、政治及び文化に関する一般常識)の試験方法については以下のとおりです。(ガイドラインからの抜粋)

試験全体について

日本地理、日本歴史及び一般常識についての筆記試験は、外国人観光旅客が多く訪れている又は外国人観光旅客の評価が高い観光資源に関する地理、歴史並びに産業、経済、政治及び文化についての主要な事柄(日本と世界との関わりを含む。)のうち、外国人観光旅客の関心の強いものについての基礎的な知識を問うものとする。

一般常識筆記試験について

  1. 試験方法・試験は、現代の日本の産業、経済、政治及び文化についての主要な事柄(日本と世界との関わりを含む。)のうち、外国人観光旅客の関心の強いものについての基礎的な知識(例えば、試験実施年度の前年度に発行された「観光白書」のうち、外国人観光旅客の誘客に効果的な主要施策及び旅行者の安全・安心確保に必要となる知識、並びに新聞(一般紙)の 1 面等で大きく取り上げられた時事問題等)を問うものとする。
    • 試験の方式は、多肢選択式(マークシート方式)とする。
    • 試験時間は 20 分とする。
    • 試験の満点は、50 点とする。
    • 問題の数は、20 問程度とする。
  2. 合否判定 ・合否判定は、原則として 30 点を合格基準点として行う。

私の一般常識筆記試験対策について

ガイドラインを熟読した上で、試験対策を考えました。ネット上では出題が変だとか意味のわからない問題がでるとか様々な憶測がありましたが、私は国家試験でそれはありえないと思いました。満点が50点、問題数が20問程度という比較的小さな(?)試験科目なので、基礎的(つまり最低限理解していてほしい)で、より本質的な出題に限定されてくるはずです。枝葉末節的な出題が入る余地は無いと思います。そして、基礎的で本質的な内容とは何かを考えると、ガイドラインに示されている「観光白書」と、観光庁、JNTO(日本政府観光局)が公表している内容と捉えました。ここをおさえておけば基準点の30点になるだろうと思いました。新聞の一面で大きく取り上げられたような時事問題については、新聞一面のすべてをスクリーニングする余裕は無かったので、知らないものがでたらあきらめようと思いました。

まとめると私の試験対策は

  • 過去問題を解く
  • 前年度の観光白書をよく読む(2年前の観光白書にも目を通しました)
  • 観光庁、JNTOのサイトを見る   ここまでで合格基準点の30点をとる
  • その他、余裕があれば他のもの   すでに持っている知識等で10点くらい加算したい
  • 目標40点

となりました。(かなり大雑把)

昨年度の試験について

筆記試験の過去問題は JNTO 日本政府観光局のサイトで過去5年分が公開されています。受験を考えている方はすべて目を通すことをお勧めします。やはり観光白書からの出題が多いことがわかります。

例えば私が受験した昨年度(2021年度)の試験では、

  • 訪日外国人旅行者数 正しい数値を選択する(問1、2点)
  • 日本の人口動態 正しい説明文を選択する(問2、3点)
  • ラグビーワールドカップ日本大会の外国人旅行者の旅行支出に関する数値の組み合わせ(問3、2点)
  • 2020年4月に成立・公布された文化観光推進法を選択するもの(問4、3点)
  • 語句「ワーケーション」を選択するもの(問13、2点)
  • 「日本遺産」に関する説明文を選択する(問15、3点)

などです。

また、以前紹介した「通訳案内の実務」の試験対策で使用した「観光庁研修テキスト」からの出題がありました。「え、こっちで出るの?」と少し驚きました。例えば、

  • 「MICE」に関する正しい説明文を選択する(問6、3点) *ちなみに国際会議の誘致・開催については観光白書にあります。私はこれを誤答してしまいました。痛恨のミス!
  • 「パッケージツアー」を旅行業法上は何というか語句を選択する(問10(1)、3点)

「新聞の一面等で大きく取り上げられた時事問題」については、正直どれが相当するのかわかりませんでしたが、おそらく、

  • 北海道白老町にできた「ウポポイ」の正式名称を選択する(問10(2)、3点)
  • SDGsの目標と観光庁の持続可能な観光ガイドラインを組み合わせて選択する(問12、各2点)

このあたりだったのではないかと思いました。新聞一面のスクリーニングにかかる膨大な時間と労力を考えるとやめておいてよかったと思いました。

その他、日本地理の勉強と関連していた出題としては、

  • 前述の「ウポポイ」の正式名称を選択する
  • 語句「重要無形文化財」を選択する(問8、3点)
  • 日本で一番寺院が多い都道府県を選択する(問9、2点) *京都府と愛知県で迷いました!
  • 2020年にユネスコ「無形文化遺産」に登録されたものを選択(問15(2)、2点)
  • 世界自然遺産に登録勧告する機関の略称を選択する(問15(3)、2点)

誤答してしまった問題は、

  • 2016〜2018年度に観光庁が実施した「訪日外国人旅行者の受け入れ環境整備における国内の多言語対応に関するアンケート」の中で訪日旅行者が「旅行中に困ったこと」を選択する(問5、3点)
  • 前述のMICEに関する問(問6、3点)
  • 文化庁の Living History (生きた歴史体験プログラム)促進事業の説明を選択する(問7、3点)
  • ホテル・旅館を所管する省と、空港の出入国管理を所管する省を選択する(問11、(1)(2)、各2点)
  • 日本版MaaS に関する説明を選択する(問14、3点)

失点の合計は16点ですので、34点をとり合格基準点をなんとかクリアできました。誤答したもののうち最初の3つははじめ正解を選んでいたのにあとで迷ってしまって誤答を選んでしまったものです。帰宅して自己採点をしているときに Don’t think twice, it’s alright! とボブ・ディランの声が聞こえてきた気がしました(古い!)。残りの2つ(7点分)はまったくわかりませんでした。

試験の感想

あくまで私個人の感想です。私は昨年度しか受験していないので参考程度に見ていただけると幸いです。

  • 「産業、経済、政治及び文化に関する一般常識」という名称がついているが、試験内容は、訪日外国人旅行者の動向と訪日外国人旅行者を迎え入れるための施策に関するものがほとんどであること。
  • 観光白書の読み込みは必須。私はPDFをダウンロードしてiPadでマーカーを引いたりメモをとったりしながら読みました。
  • 正しい説明文を選択する問題は、間違いそうな文章がひとつ紛れている。たぶん平均点を合格基準点の30点に近づけるためだと思います。
  • 公開されている過去問題はすべて解いて、過去の観光白書も参照した方が良い。
  • 「通訳案内の実務」や「日本地理」の勉強とかぶるところでも少し得点できる(たぶん)。
  • 略称や造語に要注意。直接語句を選択したり、説明文の中に登場したりします。2021年度の場合は、MICE、ICCA、ブレジャー、SDGs、ワーケーション、ICT、FIT、日本版MaaS、DMO、DX、ICOMOS などが登場しています。
  • 新聞一面の記事を全部調べる等の準備は時間がかかるのでやらなくてよかった。他の勉強時間を確保できた。
  • 「大きく取り上げられた時事問題」についても観光に関するものに絞る。
  • 観光白書の他に、JNTO、観光庁、文化庁などのサイトで観光施策に関する情報を得ると良い。統計資料なども公開されています。
  • 実は心配になって、公務員試験などでよく活用される「最新時事用語集」類を2冊ほど購入し、目を通したが、結果的にあまり役には立ちませんでした。

昨年12月、上京して2次口述試験を受けました。試験会場に集まった方々を見て、年齢層が高かったことが印象的でした。自分もそうですが、皆さん日々の忙しい中で時間をつくって勉強しているのだろうと思いました。ここまで来たんだから全員合格にしてくれればいいのにとも。

これから受験される方の少しでもお役にたてると幸いです。お読みいただきありがとうございました。

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