全国通訳案内士一次筆記試験「通訳案内の実務」について
私は2021年度の全国通訳案内士(英語)試験に何とか合格することができました。ここでは、一次筆記試験科目のうち「通訳案内の実務」対策で私が準備したことをまとめておこうと思います。
まず、JNTOの全国通訳案内士試験ガイドラインには、「通訳案内の実務」について次のように記されています。
- 試験方法
- 試験は、通訳案内の現場において求められる基礎的な知識(例えば、旅行業法や通訳案内士法等の業務と密接に関係する法令に関する基本的な内容や実際に通訳案内業務に就くにあたっての訪日外国人旅行者の旅程の管理に関する基礎的な内容)を問うものとする。
- 本科目については、原則として、観光庁研修のテキストを試験範囲とする。
- 試験の方式は、多肢選択式(マークシート方式)とする。
- 試験時間は20分とする。
- 試験の満点は、50点とする。
- 問題の数は、20問程度とする。
- 合否判定
- 合否判定は、原則として30点を合格基準点として行う。(ガイドラインより抜粋)
この科目は「原則として、観光庁研修のテキストを試験範囲とする」と明記されていますので、このテキストをしっかりと読み込むことが必要です。テキストは観光庁の通訳ガイド制度のページで公開されています。私は以下のPDFをダウンロードして、すみからすみまで何度も目を通しました。
観光庁研修テキスト(第1版)の構成
「はじめに」に近年の動向と全国通訳案内士への期待が綴られています。次に「目次」があります。大まかな構成を俯瞰できます。テキストの内容は以下の4つに大きく分かれています。
- 旅程の管理に関する基礎的な項目・関係法令に関する基本的な知識
- 危機管理・災害発生時等における適切な対応
- 外国人ごとの生活文化への対応
- 資料編
ちなみに観光庁研修テキストの内容は、二次口述試験にも必要です。「通訳案内の現場で必要となる知識等に関する外国語訳及び全国通訳案内士として求められる対応に関する質疑」(ガイドラインより)について適切な受け答えをすることが求められるからです。以下、章ごとの内容です。
第1編 旅程の管理に関する基礎的な項目・関係法令に関する基本的な知識
- 通訳案内士法・旅行業法等に関する知識
- 通訳案内士制度について
- 旅行業法
- 旅行業法に基づく旅程管理
- 旅程管理の実務
- 旅程管理の必要性
- 訪日外国人旅行者に対する特別な配慮
- 添乗の準備
- 添乗
- 報告・精算
法律の文章は一字一句注意深くつくられていると思いますので、テキスト中に引用されている関連法案の条文は、暗記するくらい何度も読みました。テキストを読んだだけでは十分に理解できないところもあったので、通訳案内士法、旅行業法(e-Gov法令検索より)にも一通り目を通しました。
- 私が特に気をつけたところは以下です。
- 業務独占の廃止と名称独占規制の存続
- 通訳案内研修
- 旅行業法における旅行の種類
- 禁止行為
- 日数・範囲による分類
- ICT〜 Inclusive Conducted Tour
- IIT〜 Inclusive Independent Tour
- 目的別分類
- FIT〜 Foreign Independent Tour
- SIT〜 Special Interest Tour
- TV〜 Technical Visit
- MICE〜 Meeting, Incentive, Convention, Event ← 一般常識で出題されました!
- FAM〜 Familiarization Trip
- Shore Excursion
- Overland Tour
- SIC〜 Seat-In-Coach
- ショッピングツーリズム
正直、通訳案内士はここまで添乗に関することなどを求められるのだろうか、とも思いましたが、きっと現場に出れば必要になるのだろうな〜と想像しながら読んでいました。
第2編 危機管理・災害発生時等における適切な対応
- 危機管理と事前調査
- 全国通訳案内士にとっての危機管理の基本的な考え方
- 事前調査
- 危機の事前防止及びトラブルの最小化
- 危機発生後の適切な対応
- 災害発生時等における適切な対応
- 災害発生時の対応の基本
- 救急救命措置
- 外国人旅行者に対応可能な医療施設等に関する知識
- 危機管理/災害時対応で有用な情報
- コンプライアンス
- 著作権法
- 道路運送法
- 商品・サービスの説明に関する法令
- 危機管理についてはとても具体的に説明がなされています。私が特に気をつけたところは以下です。
- 救急救命措置〜以前、講習を受けたことがありますが、あらためて内容を思い出しながら読みました。
- 保険と医療費について
- 道路運送法について
- 薬機法上の禁止事項について
- 景品表示法について
第3編 外国人ごとの生活文化への対応
- 宗教上の注意点・食事制限の知識
- なぜ、外国人ごとの生活文化への対応が必要か
- 宗教ごとの特徴
- 食事制限に関する知識
- 飲食店等での受け入れ対応方法
- 文化別・国別の特徴
- 訪日客全体の状況
- 東アジア
- 東南アジア
- 北米
- ヨーロッパ
- オセアニア
- 私が特に気をつけたところは以下です。
- 宗教ごとの特徴〜イスラム教・ユダヤ教・キリスト教・仏教・ヒンドゥー教・ジャイナ教、特に食事に関してのこと
- ベジタリアンについて
- ビーガン、ピュア・ベジタリアン
- ラクト・ベジタリアン
- ラクト・オボ・ベジタリアン
- オリエンタル・ベジタリアン
- ペスキタリアン
- ポヨ・ベジタリアン
- 食物アレルギーについて
- 訪日客の状況、人数、旅行支出、購入率ランキングとアンケート結果は地域別によく目を通しました。
資料編
- 資料編に出ている専門用語等に目を通しました。
通訳案内の実務は以上のテキストを出題範囲としているので、他の科目よりも勉強がしやすいと思います。私はこのPDFの資料と過去問題以外は使用しませんでした。ただ、範囲が限られているとはいえ、慣れない法令文書やまだ実際の経験がない現場での対応などについて問われるため、試験問題が簡単だとは思えませんでした。特に今回の試験は過去問題よりも難しい印象を持ちました。過去問題では常に基準点をクリアできていたのでちょっと油断していたのですが、試験後は自宅に戻って自己採点するまでこの科目が一番不安でした。結果はギリギリセーフでした。
観光庁研修テキストと関連する法令に目を通して、過去問題にあたり、またテキストに戻って確認するという作業を数回行いました。ガイドラインにそって勉強することと、今後の試験傾向に変化がないか時々観光庁のサイト等でチェックすることも必要かと思います。私の個人的な経験でしたが、これから受験を考えている方の少しでもお役に立てると嬉しいです。
お読みいただきありがとうございました。