英検1級の2次試験・私の失敗
英検の審査領域として「読む」「聞く」「話す」「書く」の4つが挙げられています。そのうち「話す」が最も苦手だという方の話をよく聞くのですが、私もその一人です。私は2回目の受験で合格しました。これから2次試験に臨まれる方もいらっしゃると思いますので、私の失敗経験が少しでもお役に立てると幸いです。
2分間スピーチの失敗(1回目の受験)
英検の審査領域のうち「話す」については「社会性の高い幅広い話題についてやりとりすることができる」となっています。学生時代の試験勉強の感覚でいた私は何をどのくらい準備したらよいのか分からずちょっと困りました。5つのトピックの1つくらいは自分の知っている話題があるだろうと期待して、過去問題くらいは確認しましたが、結局、試験当日までこれといって有効な準備をできずに過ごしてしまいました(*英検のサイトへはリンクを貼ることが禁じられているため、過去問題等は公式サイトで御覧ください)。
試験当日、自分の順番が来て、係の方に誘導され入室しました。試験官はアメリカ人と日本人の男性2名でした。日本人の試験官の方からは挨拶と席に座る指示、その後はほとんどアメリカ人の試験官の方とお話することになりました。日本人の試験官の方はやりとりを聴きながら採点しているようでした。5つのトピックが書かれたカードを渡されました。1分間でトピックを選んで準備しなければならないのですが、自信を持って話せそうなものは1つもありませんでした。
私が決めたトピックは「宗教は人々の道徳(モラル)に良い影響を与えているか」というような内容だったと思います(すみません。はっきり覚えていません)。どのように話したら良いかまとまらないまま1分終了。
試験官「始めてください」
私「宗教は良いものです。なぜなら良い生き方を教えているからです。宗教の教えには愛があります。人々がともに生きていくのためになくてはならないものなのです。日本人には信仰がないという人もいますが、たくさんの人が正月には神社やお寺に行きます。誰かが亡くなればお坊さんを呼んで葬式をします。最近は私もお葬式に呼ばれることが多くなりました、、、」(頭に浮かんだことをとりあえず口に出し続け、自分でも話していることが分からなくなり、支離滅裂のまま2分終了)。
スピーチの後の4分間は試験官の方からの質問に答えます。
試験官「宗教が教えている良い生き方とはどのようなことですか。具体例を挙げてください。」
私「ゴミを拾ったり、人に親切にしたり、、、」(スピーチ失敗の敗北感で頭がいっぱいの状態)
試験官「あなたは宗教が良い生き方を教えてくれるとおっしゃいましたが、たとえば世界においては、宗教が戦争の原因となることがあります。そのことについてはどのように思いますか。」(たしかこのようなことを質問されました)
私「宗教の教えが戦争の原因ではないと思います。私の知っている限りどの宗教も人を愛することを教えています。宗教の力を利用する人間が戦争の原因だと思います、、、」(話がこじれそう。つっこみどころ満載ですがとにかく喋っているという状態。英語ももちろんしどろもどろ)。
その後もよくわからないやりとりになってしまって、そのまま持ち時間終了。敗北感を抱えたまま退室しました。そして結果はやはり不合格でした。
失敗の分析
- 失敗の4つの原因
- 試験範囲が広すぎて対策をあきらめていた(あきらめてはいけない)
- 出題されるトピックはたしかに「幅広い話題」ですが、「社会性の高い」ものとなっています。つまり「世の中の多くの人が関心を持っている一般的な常識で答えられる範囲の話題しか出ない」のだと頭を切り替えました。それぞれのトピックについての専門的な知識は問われません(たぶん?知識はあるにことしたことはありませんが)。また、社会性が高く世の中の多くの人が関心を持っているということは、賛成意見も反対意見も存在するような controversial な話題、よくディベートのテーマになるものを、広く浅く調べることが良いと考えました。
- スピーチは構成パターンで準備するということを知らなかった(知っておくべきだった)
- 試験のスピーチで求められることは、あるトピックについて根拠を明らかにしながら自分の意見を述べるという基本的なことをよく理解しておらず、ただ知っていることを喋ろうとして失敗していました。2分間という短い時間ですが、たとえ内容があっさりとしていたとしても、賛成なのか、反対なのか、または良いと思うのか、悪いと思うのか、自分の意見を明らかにした上で、そう考える理由を2,3述べ、最後に結論(自分の立場)を述べるという論理的な流れをつくる必要があります。
- 準備の1分間の使い方がだめだった(時間を意識するのは試験の鉄則)
- 最初の10秒ほどでスピーチを構成できそうなトピックを決めます。残りの50秒で自分の立場、それを裏付ける理由を2〜3つ、そして結論までの構成を決めます。時間が限られているので、頭の中で箇条書きで確認するイメージです。それができずにただどうしようどうしようと1分を使ってしまっていた。
- 「コミュニケーション」をとろうとしていなかった(致命的だった)
- ダメダメでした。この試験は「やりとり」ですので、自分の選んだトピックを中心に試験官の方々とのコミュニケーションがとれたかどうかが大切です。私は自分の裁判で尋問を受けるような気持ちで入室していたと思います。
- 試験範囲が広すぎて対策をあきらめていた(あきらめてはいけない)
2回目の挑戦(リベンジ)
- 2次試験に向けて準備した4つのこと
- 対策本でスピーチ構成の練習
- 失敗の分析をした上で、自分に合う対策本を探しました。私が選んだのはJリサーチ出版の『英検1級面接大特訓』(アマゾンのリンク)という対策本です。この本は2次試験に出題されるトピックの分析、スピーチ構成の例、実践練習もついていて、私の反省内容を十分に補ってくれるものでした(というか最初から対策本を買っておくべきだった)。
- スピーチを構成するためのフレーズの練習
- 対策本でとても役立ったのが、スピーチを進めるための表現を集めた章です(第2章の「短文練習」)。この練習のおかげで表現力が上がりました。
- pro & con サイトで練習
- スピーチ練習は上の対策本が中心となりましたが、それだけでは足りないと思い、もっと多くの話題について「広く浅く」目を通すために controversial なトピックを扱っている海外のディベートサイトを探しました。私が参考にしたのは ProCon.org です。このサイトは膨大な数の controversial なトピックについてジャンルごとに pros(賛成)と cons(反対)両方の立場を見やすくレイアウトしてくれています。量が非常に多いのですべてに目を通すことはできませんでしたが、日本にもあてはまりそうなものを選んで pro と con を支える理由を2〜3つくらいずつ目を通し、試験に出そうなものはノートに書いてまとめ直しました。このサイトは本当に役に立ちました。試験前の直前期でも広く浅くざっと目を通すことをおすすめします。
- 鏡に向かってコミュニケーションの練習
- 子どもみたいな言い方で恐縮ですが、コミュニケーションは基本的に相手と仲良くなるためのものだと思います。そして自分の考えを誰かに聴いてもらうというのは気持ちのよいことです。鏡を見て私は自分が随分とおかたい感じのしかめっ面でしゃべっていたことに気付きました。たとえつっかかっても顔を上げて明るい表情で話すことを心がけて、自分の論点が伝わるように2分間のスピーチ練習を繰り返しました。
- 対策本でスピーチ構成の練習
当日の試験は、スピーチと質疑応答も満点には程遠かったと思いますがスムーズに進みました。割とスッキリ話せて内容を覚えていないくらいです。最後の方は試験官の方々(2回目はふたりとも女性)と趣味の読書の話で盛り上がり(好きな作家が共通していました)、なごやかに楽しく試験を終えることができました。英語を勉強して良かったと思えた瞬間でした。
2次試験は入室から退室までたった10分間。この10分間のためにこれまでどれほど時間をかけて勉強してきたか、、、と思うと緊張しました。でもこの10分間は自分が主役になるという気持ちで臨みました。そうすると不思議と落ち着いて入室することができました。以上、私の拙い経験でした。これから受験される方のご成功をお祈りしています。
お読みいただきありがとうございました。