ヘミングウェイで学ぶ英文法
アーネスト・ヘミングウェイの優れた短編を十二分に味わうための英文法をしっかりと解説してくれる素敵な本です。ヘミングウェイのファンのみならず英文学をオリジナルテキストで深く味わいたいという人にもおすすめです。
アーネスト・ミラー・ヘミングウェイは、1920年代から50年代にかけて活躍したアメリカ生まれの小説家で、代表作には『武器よさらば』『陽はまた昇る』『誰がために鐘は鳴る』などがあります。作品中最も評価を受け、ノーベル文学賞受賞のきっかけともなった『老人と海』が最近NHKの「100分 de 名著」(こちらもおすすめ)でもとりあげられるなど、また人気が復活しているような気がします。
よく知られるように、シンプルな言葉を紡いで人の気持ちや情景を見事に表現していく、無駄のない、かつスタイリッシュな文体が魅力です。ヘミングウェイは短編の名手としても知られています。実は、若い頃はヘミングウェイの短編を読んでもピンとこなかったのです。しかし不思議なもので、年月がたって、いろいろとそれなりに人生経験を積んできて読み直してみると、ああ分かる分かる、こういうことだったのかとしみじみと心に染み入るようなことがあります。ちなみに私が最も心に残っている短編作品は “I Guess Everything Reminds You of Something”(何を見ても何かを思い出す)という生前未発表の作品です。
この本では、以下の6つの短編がとりあげられています。
- “Cat in the Rain”
- “A Day’s Wait”
- “The Sea Change”
- “Hills Like White Elephants”
- “A Simple Enquiry”
- “The Light of the World”
それぞれの作品について、和訳、原文、文法の解説、作品解説がついています。著者の解説やコラムがとてもおもしろいです。”Cat in the Rain”や”Hills Like White Elephant”なんかは、1人で読んでいたときには「ふーん」「そんなことがあったんだね」くらいの感想しか持ちませんでしたが、著者のアツい解説を読んでなるほどそうかと気付かされることが多々ありました。
今まで何気なく食べていた食材が、何かひとつ事情を知ったことで、とても好きな食材に変わってしまうというような(たとえが変?)
この本はたいへん売れたようで、続けて同じ出版社から続編の『ヘミングウェイで学ぶ英文法2』、シリーズとして『オスカー・ワイルドで学ぶ英文法』、『オー・ヘンリーで学ぶ英文法』も刊行されています。こちらもおすすめです。信頼のおけるしっかりとした文法解説で英文学の優れた短編をオリジナルテキストで楽しみたい方、一度手にとってみてはいかがでしょうか。